近年の法改正により認定こども園が創設され、「新たな施設として認定こども園を開設」「保育所から認定こども園への移行」、そして「幼稚園から認定こども園への移行」をするケースが増えています。
このように認定こども園を設立するパターンは複数あるのですが、幼稚園から認定こども園を設立するにはどのような基準を満たす必要があるのでしょうか。特に無認可幼稚園(幼稚園類似施設)からの移行を行う場面を想定してここで解説していきます。
幼稚園類似施設について
そもそも無認可幼稚園とは何でしょうか。厳密に言うと「無認可幼稚園」という定義はありません。「幼稚園」という言葉自体が文部科学省からの認可を受けた施設を指していますので、無認可幼稚園という言葉は用語として存在しないのです。
ただ、幼稚園に相当する施設であって文部科学省から認可を受けていない施設は存在します。こうした施設は「幼稚園類似施設」と呼ばれます。
例えば職員向けに病院内や大学内に設置された幼稚園類似施設などがあります。幼児教育を実施しているという点では幼稚園と共通しますので、認可基準とは異なるもののモンテッソーリ教育などを取り入れて独自の教育指針に従い運営を行う幼稚園類似施設もいくつか設立されています。
幼稚園類似施設はどの類型としての認定こども園になれるのか
認定こども園は、4つの類型に分かれます。
認可幼稚園と認可保育園の連携から成り立つのが「幼保連携型」です。
これに対し、保育所が認定こども園としての基準を満たして成り立つ類型が「保育所型」です。厳密には、児童福祉法39条に規定の保育の実施と学校教育法第23条の規定に従って保育を行う保育園が保育所型の認定こども園に該当します。
そして幼稚園が認定こども園としての基準を満たして成り立つ類型が「幼稚園型」です。幼児教育に加え保育時間を確保する必要があります。幼稚園類似施設からの移行の場合、この幼稚園型に該当しそうにも思えますが、上記の通りそもそも幼稚園と幼稚園類似施設は異なる施設ですので、次の「地方裁量型」としての設立が考えられます。
地方裁量型の認定こども園は、児童福祉法第39条に規定の保育の実施と学校教育法第23条の規定に従って保育を行う、“認可外保育施設”が対象とされています。何ら認可を受けていない地域の教育・保育施設が、認定こども園として必要な機能を果たしたときに認められる類型です。
認定こども園になる上で満たすべき基準
認定こども園になるためには、下表にまとめた基準をクリアする必要があります。
地域への子育て支援 |
一時保育 | |
子育て相談・親子の集いなど | ||
職員の配置 (園児:職員) |
0歳児 3:1以上 | |
満1歳児・満2歳児 6:1以上 | ||
満3歳児 20:1以上 | ||
満4歳以上児 30:1以上 | ||
職員の資格 |
0~2歳児 保育士資格 | |
3歳以上児 幼稚園教諭免許もしくは保育士資格 | ||
学級担任には幼稚園教諭免許
※地方裁量型に関しては、保育士有資格者でも認められる余地あり |
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施設 |
保育室あるいは遊戯室 | |
乳児室あるいはほふく室(満2歳未満児) | ||
調理室 | ||
屋外遊戯場 | ||
園舎 |
1学級の場合 180㎡以上 | |
2学級以上の場合 320+100×(学級数-2)㎡以上 | ||
保育室 |
満1歳児の園児1人あたり乳児室1.65㎡以上・ほふく室3.3㎡以上 | |
満2歳以上の園児1人あたり1.98㎡以上 | ||
屋外遊戯場 |
満2歳児以上 園児1人あたり3.3㎡以上 | |
満3歳児以上 | 2学級以下の場合 330+30×(学級数-1)㎡以上 |
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3学級以上の場合 400+80×(学級数-3)㎡以上 |
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給食 |
調理室必置 |
施設設備に関する基準
人員の問題とは異なり、施設設備に関しては基準を後からクリアすることが難しいかもしれませんが、園舎・保育室・屋外遊戯場につき要件を満たさなければ認定こども園になることはできません。
例えば、「園庭を確保するスペースがない」「調理室を設けていない」「各部屋の面積が十分に確保できない」といった問題を抱えている場合があるでしょう。
こういった課題は、施設や設備の改修も視野に計画を策定してかなければなりません。
人材に関する基準
人材に関しては施設の面積などの問題よりは解決しやすいかもしれません。
どの年齢の子どもに対し、どの資格を持った職員を、どの程度の数用意しなければならないのかを整理し、人材確保および既存職員の資格取得計画を策定しましょう。
また、園内部の労働環境にも配慮が必要です。近年は特に保育士等の待遇改善に対する社会的関心が高まっていますので、好待遇・働きやすい環境を提供することが園の評判にも繋がってきます。その観点から、福利厚生についても充実させていくと良いでしょう。