「特定教育・保育施設等の指導監査」に向けての準備、必要書類とは?

子ども・子育て支援新制度のもと、一定の保育・教育施設には、運営の適正性を確保するための指導監査が実施されます。この制度は平成27年から始まった比較的新しいルールで、認定こども園や保育所、幼稚園などの施設を運営する方は同制度へ適切に対処していくことが求められます。
ここでは簡単に指導監査の内容や目的について触れたのち、施設運営者が備えておくべこと、必要書類などについてご説明します。

指導監査の制度について

特定教育・保育施設等の指導監査は、子ども・子育て支援法や児童福祉法に基づき、認定こども園・保育所・幼稚園などが一定のルールに沿って運営できているかどうかをチェックするとともに適正な運営を確保するために行われるものです。

運営基準の遵守状況や給付費請求の適正性を確認し、必要に応じて助言・改善指導も行われます。

実施方法には①集団指導(事業者を一定の場所に集めて講習等の方法により行われる。オンラインで実施されることもある)、②実地指導(施設において実際に書類の閲覧や関係者との面談を行う)、③監査(運営基準違反が確認された場合など不正行為が認められるような場合に実施され、より厳格な調査が行われる)があり、実施頻度については自治体によって異なります。

※毎年実施する地域もあれば、3年に1度を基本とする地域もある。

重点的に見られるポイント

指導監査においては、特に次の点が重点的にチェックされると考えられています。

職員の配置状況 各施設で配置すべき保育士等が、基準に基づく適正な配置となっているかを確認。人員配置基準は施設の種類や利用定員によって異なるため、自施設の基準を正確に把握しておくことが重要。
運営規程 運営規程に各市町村の条例等で定められた重要事項が規定されているか、また運営規程を変更した場合の届出が適切に行われているかを確認。
安全管理 子どもの安全を確保するための体制、職員への周知や定期的な研修・訓練の実施状況などを確認。災害時に必要な具体的な計画、避難体制、連携体制等の対策を講じられているかどうかが重要。
記録の整備・保存 児童の登園・降園した時間の記録の整備・保存状況も重要な確認項目。管理システムの活用状況なども見られ、適切に管理できていないことを理由に指摘を受けるケースもある。

 

よくある指摘事項

指導監査により、ほかの事業者がどのような点で指摘を受けているのかを確認することで今後の対策方針も立てやすくなるでしょう。

たとえば、「面積基準の超過」はよくある指摘事項です。0歳児と1歳児クラス、2歳児~5歳児クラスで、それぞれ一定以上の面積を確保していることが求められます。これは利用定員ではなく実際の利用者数に照らして面積基準を満たす必要があるところ、基準を満たせていないまま運営していると実地指導の際に指摘を受けることになるでしょう。

給食関係でも指摘を受けることがあります。たとえば、脂肪エネルギー比率が高く対象者の栄養状態に悪影響を及ぼすおそれがある場合、などが挙げられます。

睡眠時の安全対策も重要です。睡眠中の子どもの表情や顔色が分かる程度の明るさが保たれていない、0歳児クラスにおいてうつぶせ寝のままになっている、などの指摘を受ける可能性もあるのです。

事業者側が準備しないといけないこと

指導監査に向けて事業者側が準備すべき事項は多岐にわたります。適切に準備をしておくことで監査をスムーズに進行させ、不必要な指摘を避けることができるでしょう。

そのためにもまずは、指導監査の通知書の内容を詳細に確認することから始めましょう。通知書には通常、監査の日時や場所、事前提出資料、当日準備すべき書類などが記載されています。

 

必要書類について

指導監査で確認される書類として、大きく「職員関係」「設備関係」「会計関係」が挙げられます。

  • 職員関係の書類・・・各時間帯において保育士等が規模に応じて基準どおりに配置されていることがわかる書類、就業規則や給与規程等、安全衛生管理体制がわかる書類、職員の健康診断の実施状況が分かる書類などもあると良い。
  • 設備関係の書類・・・施設や設備が、法令その他各自治体が認める基準に従い整備されているとわかる書類、児童の保健衛生や危険防止に配慮され、衛生的な管理がなされているとわかる書類も重要。
  • 会計関係の書類・・・適正な会計処理を維持するための経理規程が定められているかを確認できる書類、会計年度ごとに作成する決算書等など。

そのほかにも、保護者との間で締結した契約書や、発行した領収証など利用料等の金額がわかる書類などの準備が求められることもあります。

自己点検の実施も大切

多くの自治体では、指導監査に先立って自己点検表の提出を求めています。

この自己点検表は、施設が自ら運営状況を確認し、法令遵守状況を把握するためのツールです。
事前に自己点検を実施し、問題点を前もって把握することができれば、指導監査での指摘を最小限に抑えることができますし、実際に事故が発生するリスクも下げることができるでしょう。