保育の必要性の認定基準|「保育が必要な事由」について解説

「保育の必要性」についての認定基準とは、子どもが保育所や認定こども園を利用できるかどうかを判断するための基準です。
まず大きな基準となるのが「保育が必要な事由」の存在ですので、当記事ではこの各事由の詳細を解説していきます。

認定を受けるための事由は10個ある

保育の必要性の認定制度については市区町村が実施主体であり、各自治体が定める指標に基づいて評価を行うことになります。
ただし、自治体によりまったく異なる運用をしているわけではなく、その大元は法律(子ども・子育て支援法)や規則(子ども・子育て支援法施行規則)などの法令にあります。
保育の必要性に関して具体的に定めているのは「子ども・子育て支援法施行規則」であり、同規則第1条の5では第1号~第10号までに各事由を列挙して、“次の各号のいずれかに該当すること”が必要と定めています。

事由①一定時間以上働いていること

同規則には、まず第1号にて次の規定が置かれています。

一月において、四十八時間から六十四時間までの範囲内で月を単位に市町村が定める時間以上労働することを常態とすること。
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第1号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

一定時間以上働いている場合に該当し、多くの利用者はこの第1号に該当することを理由に利用を申し込むことになるでしょう。
この時間設定は、「一般的なフルタイム就労者は『1週あたり5日』『1日あたり7時間以上』の就労をしていることが多い」という実態を踏まえ、その半分以上就労していることを目安に行われています。
なお、規則ではこのように下限に幅を持たせていますが、自治体によって基準となる時間が異なりますのでご注意ください。
次のように定め方にも地域差があります。

 例1「労働することを常態(月60時間以上)としている」
 例2「一月あたり64時間以上労働している」

なお、重要なのは労働時間であって、正社員やパート、派遣社員かどうかなどは関係ありません。
また、夜間の就労などもすべて対象です。

事由②妊娠・出産

第2号にて次の規定が置かれています。

妊娠中であるか又は出産後間がないこと。
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第2号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

妊娠中である、出産から間もない、という場合には保育の必要性が認められます。
各自治体でも次のように定める例があります。

 例1「母親が出産準備や産後静養が必要(出産から8週間経過する日の翌日が属する月末まで)」
 例2「母親が出産の前後である(産前産後8週に限る)」

事由③病気・怪我・障害

第3号では次の規定が置かれています。

疾病にかかり、若しくは負傷し、又は精神若しくは身体に障害を有していること。
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第3号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

病気や怪我、精神障害、身体障害を理由に自宅で子どもを見続けることが難しい場合にも、認定を受けられます。
自治体では次のように定める例があります。

 例1「病気、負傷、心身の障がいを有している」
 例2「病気・ケガをしている、または心身に障がいがある」

事由④介護や看護をしている

第4号には次の規定を置いています。

同居の親族(長期間入院等をしている親族を含む。)を常時介護又は看護していること。
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第4号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

保育を要する子どもの兄弟が障害や小児慢性疾患を抱えており、介護や看護を必要とするような場面で適用されます。
なお、“常時”の考え方については次のように自治体による差があります。

 例1「親族(長期間入院を含む。)を常時(月60時間以上)介護または看護をしている」
 例2「病気やケガ、障がいのある方の看護・介護を、常時(一月あたり64時間以上)行っている」

第1号の就労と同じように、月あたり60時間ないし64時間以上を定める例が多いようです。

事由⑤災害等の復旧にあたっている

第5号には次の規定を置いています。

震災、風水害、火災その他の災害の復旧に当たっていること。
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第5号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

地震などの災害を受け、その復旧のため自宅で子どもをみることが難しい場合には第5号により保育の必要性が認められます。
基本的には利用者自身の被災が想定されていますが、災害に対するボランティア活動を理由に認定される余地もあります。
※ただしボランティア活動に関しては態様・期間などに応じ一時預かりで対応することや、第5号「災害復旧」ではなく第10号(後述)への該当で認定を行うことも考えられる。

事由⑥求職活動を続けている

第6号には次の規定を置いています。

求職活動(起業の準備を含む。)を継続的に行っていること。
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第6号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

現在仕事をしている方(第1号)ではなくても、仕事を探している段階、応募をしている段階でも第6号への該当により認定を受けることは可能です。
ただし、自治体によっては次のように条件が付けられているケースもあるため注意が必要です。

例「求職活動を継続的に行っている(入所後90日目の属する月末までの就職が条件)」

なお、インターンシップ中に関してもこの第6号に該当するものとして認定を受けられる余地はありますし、態様・期間に応じて第1号「就労」に該当する可能性もあります。

事由⑦就学・職業訓練をしている

第7号には次の規定を置いています。

次のいずれかに該当すること。

イ 学校教育法第一条に規定する学校、同法第百二十四条に規定する専修学校、同法第百三十四条第一項に規定する各種学校その他これらに準ずる教育施設に在学していること。
ロ 職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第十五条の七第三項に規定する公共職業能力開発施設において行う職業訓練若しくは同法第二十七条第一項に規定する職業能力開発総合大学校において行う同項に規定する指導員訓練若しくは職業訓練又は職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(平成二十三年法律第四十七号)第四条第二項に規定する認定職業訓練その他の職業訓練を受けていること。
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第7号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

端的に説明すると、この条文にある“イ”は学校に通っていることを指しており、“ロ”は職業訓練を行っていることを指しています。
なお、就労等と同じく学校等に通っている時間については、次のように自治体による指定がなされていることもありますので注意が必要です。

 例1「大学、専門学校等(職業訓練を含む。)に通っている(月60時間以上)」
 例2「一月あたり64時間以上、教育施設に就学、または職業訓練を受けている」

事由⑧DVや虐待のおそれがある

第8号には次の規定を置いています。

次のいずれかに該当すること。

イ 児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)第二条に規定する児童虐待を行っている又は再び行われるおそれがあると認められること。
ロ 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)第一条に規定する配偶者からの暴力により小学校就学前子どもの保育を行うことが困難であると認められること(イに該当する場合を除く。)
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第8号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

この条文の“イ”では子どもに対する虐待について、“ロ”ではDVについて規定しています。これらを理由に保育が難しいときは、第8号への該当により認定を受けることができます。
各自治体からは、例えば次のように基準が示されています。

例「配偶者からの暴力、または児童虐待のおそれがある」

事由⑨育児休業中かつ継続利用が必要

第9号には次の規定を置いています。

育児休業をする場合であって、当該保護者の当該育児休業に係る子ども以外の小学校就学前子どもが特定教育・保育施設、特定地域型保育事業又は特定子ども・子育て支援施設等・・・を利用しており、当該育児休業の間に当該特定教育・保育施設等を引き続き利用することが必要であると認められること。
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第9号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

下の子が生まれて育児休業をしている場合でも、引き続き保育施設等を利用する必要があるのなら、第9号への該当を理由に認定を受けることは可能です。

事由⑩その他市区町村が認めた

第10号には次の規定を置いています。

前各号に掲げるもののほか、前各号に類するものとして市町村が認める事由に該当すること。
引用:e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法施行規則第1条の5第10号
https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000002044

第10号は包括的な条項であり、自治体による柔軟な対応を認める内容となっています。実際、次のような基準を掲げているケースがあります。

 例1「その他やむを得ない事情があると市長が認める」
 例2「保護者が別居、死亡、行方不明、拘禁等の状態にあるほか、児童を保育することができないと区長が認める状態にある」
 例3「上記各号に類する理由により家庭での保育が困難」

そのため、第1号から第9号の枠組みに当てはめて保育の必要性を説明することが難しくても、個別に判断してもらうことで保育施設を利用できる余地が残されています。