保育園を運営する中で重要な役割を担う仕事の1つが「保育事務」です。保育事務の担当者は一般的な事務をこなすだけでなく、時には保育士のサポート役として園児の保育にも携わるケースもあり、幅広い業務をカバーする必要があります。
もちろん勤め先の園によって具体的な仕事範囲は異なるのですが、ここでは保育事務の職務に含まれ得る「人事・労務関係」「経理関係」「広報関係」「その他」の4つの仕事内容を紹介していきます。
人事・労務関係の仕事
人事や労務関係の仕事について保育事務として対応することもあります。
こちらは保育園で働く保育士やその他の従業員に関わるもので、すべての従業員が安心して快適な環境で働けるよう整える仕事です。
具体的な仕事内容の1つとして給与計算が挙げられます。
保育士等に毎月支給する給与額の計算を行います。総支給額から社会保険料などを差し引いて手取り額を計算したり、賞与や臨時手当の支給がある際にはこれらの計算をしたりします。
また、保育士のシフト作成や勤怠管理も大切な職務です。
出勤・退勤の時刻や残業時間、欠勤・遅刻の日数を記録したり、有給休暇の日数を管理したりします。これらの勤怠管理は、給与計算にも大きく関わります。また、勤怠管理を怠ると保育士等の過重労働に繋がる可能性もあるため重要な役割を担う業務です。
さらに、健康保険や雇用保険、労災保険など、社会保険関連の手続も対応します。
従業員の入社時・退職時や出産時になどには各種届出書を作成したり、回収すべき書類を回収したりします。
求められるスキル
人事・労務関係の仕事をするにあたって、労働法などの専門的な知識が必要になります。
給与計算や社会保険の手続の際に方法を誤らないためにも、専門的な知識を学び、法改正があった際には知識をアップデートしていく必要があります。
また、社会保険労務士や労務管理士、衛生管理者、メンタルヘルス・マネジメント検定、マイナンバー実務検定などの資格も仕事をする上で役立つでしょう。
これらの資格は保育事務として人事・労務関係の仕事をする上で必須ではないことが多いものの、保育事務に関わらず、一般的な会社の人事・労務の部署でも役立つ資格です。スキルアップを狙う方や人事・労務業務に詳しくなりたいという方は学んでおくと良いでしょう。
経理関係の仕事
経理関係についても保育事務として対応することがあります。
これは保育園運営の中で入ってくるお金や出ていくお金について管理・記録する仕事です。
保育園では、物品・写真の購入や教材費など保護者から現金を徴収することも多くあります。その際に徴収した現金を計算したり、それを管理したりするのです。
また、給食を作るための食材費や備品の購入費などによって請求がある場合には振込を行ったり、保育士等が立て替えて支払ったものがある場合には経費精算をしたりします。
他にも、運動会や発表会などの大きな行事の前には予算書を作成し、行事後には実際に発生した費用等を決算書にまとめます。発生した費用について帳簿への記入を行うこともあります。
求められるスキル
経理関係の仕事には正確性が求められます。お金を取り扱うため、細かな計算・作業が必要なのです。従業員への給与振込や業者への振込を行う際には1円のミスも許されません。一つひとつの作業を丁寧にかつ正確に行えるスキルが重要です。
また、簿記の基礎知識があると役立ちます。
「資産・負債・純資産」、「収益・費用」の区別や「借方・貸方」など仕訳をする際の最低限の知識があると経理業務をスムーズに進められるでしょう。
広報関係の仕事
広報関係の仕事も保育事務として対応することがあります。
具体的には園の情報提供や園児募集、採用情報の発信、といった業務です。
保育園のWebサイトの更新や、月に一度の「保育園だより」の発行などもこれに当たります。また、最近はブログやSNSに園での日々の活動の様子や行事の様子を掲載する保育園もあります。
これらの業務は、保育園に通う園児の保護者はもちろん、入園を検討している保護者にとって有益な情報となるため、園児募集や園の情報提供のために重要な業務です。
この業務に付随して、ブログやSNS、Webサイトに掲載する写真を撮影する仕事も必要になったり、写真撮影を業者に依頼する場合には業者探しや手配も必要になったりします。
求められるスキル
保育事務として広報関係の仕事を行うにあたって必須の資格は特にありませんが、Webサイトやブログ、SNSの更新には、インターネット関連の基礎知識はある程度必要です。
また、文章を作成する能力もあるとより良いでしょう。Webサイトや保育園だより、ブログ、SNSで発信する文章は、読み手が読みやすいように、知りたい情報を効率的に得られるようにと、読み手を意識して文章を作成することが大切です。
さらに、WebサイトやSNS、保育園だよりなどさまざまな媒体に適した文章を考えることも大切です。このようにライティングスキルは、保育事務として園の情報を外部に効果的に伝えるために役立つ重要なスキルといえます。
その他の仕事
以上で挙げた労務・経理・広報関係の仕事の他にもさまざまな業務に対応することがあります。
保護者や外部の業者からの電話対応や、来訪者があった際の来客対応などがその一例です。また、保育士が不足しているときには、サポートとして園児の保育を行うこともあります。特に大きな行事の前後には保育士が忙しくなるため、保育士のサポートに入ることも多くなる可能性があります。
その他にも、保育士等と連携して行事スケジュールを作成したり、行政への提出書類を作成したり、備品を管理したり発注したりすることも保育事務の仕事の一部です。
なお、保育事務の仕事をするのに保育士資格が必要な場合と不要の場合の両パターンがあります。採用時の条件が保育士資格必須の場合には取得する必要がありますが、必須条件にない場合は特に必要ありません。ただし、必要ない場合でも保育士資格を持っていることで有利になることもあります。
その他重要なスキルとしてコミュニケーション能力があります。保育園で働く保育士等とのコミュニケーションはもちろん、園児や保護者、外部の業者、行政関係者などさまざまな人と関わる仕事です。適切なコミュニケーションを取れる能力が保育事務の仕事に役立ちます。
さらに、基本的にパソコンを使って業務を行うことが多いため、マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト(MOS)の資格などを持っていると、WordやExcelを使って資料を作成する際などに役立つでしょう。
以上で説明したように、保育事務はデスクワークを基本として労務・経理・広報など幅広い業務を網羅的に行うという特徴を持ちます。また、園児の保育に携わったり、行事の際にはその手伝いをしたりすることもあるため、子どもと関わることが好きな人にとって、一般的な事務よりもやりがいや楽しさを感じることができる仕事だといえます。