私立幼稚園・私立認定こども園の「預かり保育」について

「預かり保育」とは、幼稚園や認定こども園が通常の教育時間外に子どもを預かるサービスのことです。この制度は、働く保護者のニーズに応えるとともに、子育て支援の一環として重要な役割を果たしています。
当記事では預かり保育についての基本的なルールや、私立幼稚園や私立認定こども園における実態について紹介していきます。

預かり保育の基本的なルール

私立幼稚園や私立認定こども園での預かり保育には、いくつかの共通するルールがあります。

まず、預かり保育は主に在籍園児を対象としています。
実施時間は園によって異なりますが、一般的には朝7時半~9時までに預け、14時~17,18時ころまでの預かりとなっているケースが多いです。
また、土日や長期休暇にも対応し、預かり保育を実施している園もあります。

なお、預かり保育に対応する職員の資格要件については次のように定められています。

  • 担当職員の1/3以上が保育士資格または幼稚園教諭免許を持っていること
  • 教育・保育に関して一定の知識がある小学校教諭、養護教諭も配置可能
  • 幼稚園教諭の教職課程・保育士養成課程の履修中で、教育・保育について一定の知識がある学生も配置可能

このルールにより、子育て支援の重要な役割を果たしつつ質の確保も図られています。
なお、この資格要件には近年緩和されたという背景があり、より保護者や地域のニーズに合わせた保育の提供が全国的に進められています。

預かり保育の費用

預かり保育の費用は園ごとに異なるものの、幼児教育・保育が無償化されたことに伴い、3〜5歳児クラスの子どもたちを対象に一定条件下で費用が無償化されます。
無償化の対象となるにはまずお住いの地域にて「保育の必要性の認定」を受けなくてはなりません。そしてこの認定を受けるには、認可保育所の利用条件同等の、就労等の条件を満たさないといけません。

また、無制限に無償となるわけではなく、上限額が設けられていますので注意してください。月額11,300円(満3歳児に関しては16,300円まで)が上限で、上限を超えた部分については保護者負担となります。
ただし、無償化の対象となる預かり保育の範囲や具体的な手続きは自治体によって異なる場合があるため、詳細はお住いの市町村役場にて確認することをおすすめします。

園によってサービス内容の詳細は異なる

預かり保育のサービス内容は、各園の方針や特色によって大きく異なります。
たとえば「自由遊びを中心とする園」「水泳や英語、体操などの活動を取り入れる園」「専門講師を招き課外教室を実施する園」など、預かり保育中の活動内容も園によってさまざまです。
これらの活動を行うことによって、異年齢交流の機会を提供し、子どもたちの興味関心を広げることを目的とする園もあります。
ただしサービス内容の差は利用料金の差にもつながりますので、無償化の制度があるとはいえ保護者負担がいくらになるのかは事前によく確認しておく必要があるでしょう。

また、預かり保育の利用条件の幅に関しても園による差があります。ほとんどの園では「保護者の就労」を条件としていますが、ほかにも「兄弟の学校行事」であったり、「介護」であったり、さらには「保護者のリフレッシュ」などを掲げているケースもあります。

私立における預かり保育の実施状況

私立幼稚園の預かり保育実施率はとても高く、100%近い割合で導入されています。この値は公立の園における実施率(約70%)と比較して顕著に高くなっています。
預かり保育の実施時間についても、私立幼稚園はより長時間の対応を行う傾向にあります。具体的には、私立幼稚園の50%近くが午後5~6時まで預かり保育を実施しているのに対し、公立幼稚園では約35%が午後4~5時には保育を終了しています。
ほかに、長期休みにおける預かり保育実施状況、土曜日における預かり保育の実施状況においても、私立幼稚園の方が充実している傾向がみられます。

これらの違いは、運営主体の違いに起因する部分もあると考えられます。公立幼稚園は市区町村が運営していますが、私立幼稚園では社会福祉法人や株式会社、NPOなどの民間法人が運営主体です。より法人としての柔軟性が高いのは後者であり、その性質の違いが結果として預かり保育の実施状況にも表れているといえるでしょう。

預かり保育の今後の展望

預かり保育は、働く保護者のニーズに応えつつ子育て支援の重要な役割を果たしています。今後の展望として、特に私立の幼稚園や認定こども園では、以下のような目標に向かって進んでいくことが考えられます。

  • サービス内容の拡充
    → 利用者のニーズに合わせて、より柔軟な運用時間や長期休暇中への対応など、保護者の就労状況に合わせたきめ細かなサービスが提供される。
  • 保育の質の向上
    → 幼児教育の専門性を活かした遊びや学びのプログラム、特別活動を導入するなど、子どもの発達を支援する取り組みが進む。
  • 人材確保と育成の強化
    → 質の高い保育者の確保が課題となっており、今後は幼稚園教諭や保育士の処遇改善、研修機会の充実など、人材育成と定着に向けた取り組みの強化が進められる。
  • ICTの活用
    → 保育の運営効率化や保護者とのコミュニケーション向上のためICTの活用が推進される。予約システム、子どもの活動記録のデジタル化など。