社会福祉法人による幼保施設の設置認可申請について

社会福祉法人は、認定こども園などの幼保施設を設置し、運営していくことができます。ただしそのためには所定の要件を満たして認可を受けるための申請手続を進めなくてはなりません。また、法人設立が済んでいない場合には社会福祉法人の設立手続から必要になります。

当記事で、社会福祉法人として幼保施設を設置する場合に知っておきたいポイントを紹介しますのでご一読ください。

 

社会福祉法人の特徴

「社会福祉法人」は、社会福祉法に基づいて設立される法人です。民間が運営する組織ですが、高齢者向け、障害者向け、幼児向けの施設に係る事業を営むことが多く、公益性の高さが特徴の1つです。

具体的には「社会福祉法に規定されている社会福祉事業」を遂行するのがこの法人の大きな目的です。保育についてもこの社会福祉事業に含まれていることから、保育所や保育所型認定こども園の設置・運営をすることが認められています。

なお、保育所等の施設は社会福祉法人でなくても設置することはできますが、社会福祉法人として運営することで「世間からの信用が得やすい」「税制上の優遇が受けられる」というメリットが受けられます。
その反面、組織運営のルールが厳格で「意思決定をするには理事会や評議員会などの議決が必要」というデメリットもあります。株式会社でも取締役会や株主総会という機関は存在していますが、株主も取締役も1人の会社を作ることは可能ですし、組織の規模は自由に決めることができます。しかし社会福祉法人では役員の人数が一定以上必要になるなど、厳しく設立要件が定められています。

 

幼稚園・幼稚園型認定こども園は設置できない

社会福祉法人として幼保施設の設置を検討しているのなら、「幼稚園や幼稚園型認定こども園は設置することができない」ということは理解しておく必要があります。

各施設の設置ができる主体は次のように定められています。

 

施設の種類 設置主体
幼稚園 学校法人のみ
保育所 学校法人や社会福祉法人など
認定こども園 幼稚園型 学校法人のみ
幼保連携型 学校法人や社会福祉法人など
保育所型 制限なし
地方裁量型 制限なし

保育所や保育所型・幼保連携型の認定こども園の運営は、「保育」という社会福祉法人ができる事業内容に合致しています。
しかし幼稚園や幼稚園型認定こども園は保育というより教育施設であって、学校法人による運営が想定されています。

 

比較的大きな幼保施設設置に向いている

社会福祉法人は経営に携わる人員が多いのも特徴です。株式会社や合同会社なら経営者1人でも法律上認められますが、社会福祉法人では「理事6人以上」「監事2人以上」「評議員7人以上」が必要です。重大な意思決定に携わる上層部だけで15人が必要であり、これらの人員とは別に保育士等のスタッフを雇用しなければいけません。

この組織体制を考慮すると、小規模の保育園の運営にはあまり適していると言えません。むしろ規模の大きな、子どもの数やスタッフの数も多い幼保施設の運営に向いていると言えるでしょう。

 

幼保施設の設置認可申請までの流れ

幼保施設の設置は自由にはできません。行政から認可を受ける必要があり、審査に通るための条件を満たしておく必要があります。基本的な流れは次の通りです。

 

1 公募調査と事前相談 幼保施設誘致の公募を行っていることもあるため事前にチェックしておく。その後各地域での設立基準や認定時期などについて相談をしておく。
2 不動産探しと確保 施設の設置に適した物件を探して購入手続を進める。

契約前に幼保施設の設立基準を満たすかどうかを要チェック。

建物については賃貸でも要件を満たすことはできるが、土地については法人が所有権を持つ必要がある。

3 建物の建築または改装工事 更地の場合は施設を建築する。

すでに建物があるときは、設置基準を満たせるように改装工事等を行う。

4 設置認可申請を行う 市町村や都道府県との協議、地域住民への説明会を経て、幼保施設設置の認可申請を行う。

審査に通れば設置認可書の発行を受けることができ、事業を始められるようになる。審査には1ヶ月以上かかることも多い。

 

設置する幼保施設の種類に応じて条件が違うため注意しましょう。それぞれ必要な職員の資格、開園や閉園の時間、給食の提供、園庭の広さなどが異なっています。

 

社会福祉法人の設立要件も確認しておこう

法人設立がまだできていない場合、預保施設の設置とは別に、社会福祉法人の設立要件も満たす必要があります。

上述の通り理事・監事・評議員の人員要件を満たすことに加え、事業に必要な土地や建物を所有していること、一定額以上の資金を備えていることも求められます。

これら要件を満たし、定款も作成した上で「設立認可の申請」「設立の登記」の手続を進めると、社会福祉法人としての法人格が与えられます。