保育施設で働く先生は、子どもたちの心身の成長や発達に欠かせない重要な存在です。そこで幼稚園、保育所、そして認定こども園における先生には一定以上の知識・スキルが求められ、資格の取得という形でそれらを担保する仕組みになっています。施設により必要な資格が異なり、似た職種ではあるものの具体的な仕事内容や取得方法も異なります。
当記事では、幼稚園・保育所・認定こども園の先生に求められる資格の内容と違いについて解説していきます。
幼稚園の先生に必要な資格
幼稚園教員に必要な資格は、「幼稚園教諭免許」です。
資格の管轄は文部科学省で、学校教育法に基づく資格です。小学校や中学校、高等学校の先生などと同様、子どもの教育を行う教員として位置づけられています。
幼稚園教諭の主な役割は、「3歳児から小学校入学前の園児を対象とする教育」です。文部科学省が定めた幼稚園教育要領に基づき、各幼稚園でカリキュラムが作られます。幼稚園教諭はそのカリキュラムに沿って日々活動を行います。
幼稚園教諭免許の取得方法
幼稚園教諭免許を取得するためには、文部科学省が指定する大学や短期大学、専門学校に通い、教育課程を履修する必要があります。
取得する機関・過程によって第一種・第二種・専修という3種類があります。
簡単に説明すると、「4年制大学を卒業した人は一種」「短期大学や専門学校を卒業した人は二種」「大学院を卒業した人は専修」という免許になります。
専修・一種の免許を持っている人は二種免許を持っている人に比べて給与が高い傾向にあります。また、保育士の指導や管理をする立場を任される機会が多いことが予想されます。
幼稚園の先生としての理想の働き方や将来のキャリアアップなども考慮して、どの教育機関で免許を取得するかをしっかりと検討する必要があるでしょう。
さらに、園長になるには原則として一種免許以上が必要になるため、将来的に園長を目指す場合、大学もしくは大学院にて一種免許や専修免許を取得する必要があります。
保育所の先生に必要な資格
保育所の先生に必要な資格は、「保育士資格」です。
資格の管轄は厚生労働省で、児童福祉法に基づいて設けられている国家資格です。
保育士の主な役割は「子どもの保育」です。就労などの理由で保育ができない保護者の代わりに保育士が保育を行い、園児のお世話や日常生活のサポートを行います。
保育の対象となる園児は0歳児から小学校入学前までと幅広く、仕事内容も、食事の提供や遊びの指導、歯磨きの指導、おむつ交換、トイレの指導やお手伝いなど、幅広い点が特徴です。
働く場所としては、保育所(保育園)はもちろんのこと、児童養護施設や乳児院、障害者施設などさまざまな場で活躍できます。
保育士資格の取得方法
保育士資格を取得するための方法として、「厚生労働大臣が指定する施設で学び卒業する方法」が挙げられます。
厚生労働大臣が指定する施設には、4年制の大学や2年制の短期大学、2年制または3年制の専門学校などさまざまな施設があります。これらの施設で座学や保育実習などのカリキュラムを全て終え卒業すれば、保育士試験に合格しなくても、卒業すると同時に保育士資格が取得できます。
2つめの方法として、「保育士試験に合格する方法」が挙げられます。
保育士試験は1年に2度実施され、受験資格は短期大学卒業程度ですが、高等学校卒業が最終学歴の場合でも対象施設での実務経験が2年以上かつ2,880時間以上をクリアしていれば受験可能となっています。
試験内容は筆記試験および実技試験で、筆記試験は8科目全て合格することで実技試験に進むことができ、実技試験は3分野の中から2分野を選択して行います。この方法であれば、保育専門の大学や専門学校以外の学校を卒業した場合や、社会人の場合でも保育士を目指すことができます。
認定こども園の先生に必要な資格
認定こども園で働くために必要な資格は、「保育教諭」です。
保育教諭は、既に説明した幼稚園で働くための資格「幼稚園教諭」と保育園で働くための資格「保育士」の両方を有する者のことを指します。
認定こども園では、0歳児から小学校入学前までの園児が在園し、教育と保育の両方を一体として行います。近年、幼稚園と保育所の役割を一体化した認定こども園が増加していることもあり、保育教諭のニーズは高まっています。
特例制度の活用について
保育教諭として認定こども園で働くためには幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を有する必要があることを説明しましたが、2024年度末(令和6年度末)までの経過措置として、どちらかの資格を持っていれば保育教諭として働くことができる特例制度が設けられています。
この特例制度の目的は、新たな認定こども園制度への移行や促進を円滑に進めることにあり、元々は2015年度(平成27年度)から2019年度末(平成31年度末)までの経過措置とされていましたが、さらに5年間延長されました。
この制度を利用して、どちらか一方の資格しか持っていない場合でも認定こども園で勤務しながらもう一方の資格を取得することが可能です。
保育士が幼稚園教諭の免許を取得する場合も、幼稚園教諭が保育士の資格を取得する場合も、この制度を利用するには「3年以上、かつ4,320時間以上」の対象施設での実務経験が必要となります。
幼稚園教諭と保育士の違い
子どもと関わる職業として多くの人が思い浮かべるのは「幼稚園の先生」と「保育園の先生」ですが、その管轄や役割、対象園児などは当記事で説明したようにさまざまな面で異なっています。
幼稚園教諭と保育士について、違いを下表に簡単にまとめましたので、参考にしてください。
幼稚園教諭 | 保育士 | |
管轄 |
文部科学省管轄 | 厚生労働省 |
根拠法令 |
教育職員免許法に基づく教員免許 | 児童福祉法に基づく国家資格 |
勤務する施設 |
幼稚園 | 保育所・児童養護施設・乳児院・障害者施設など |
対象園児の年齢 |
3歳児~小学校入学前 | 0歳児~小学校入学前 |
目的 |
教育 | 保育 |
子どもの教育を行うのが「幼稚園教諭」、子どもの保育を行うのが「保育士」、教育と保育を一体として行うのが「保育教諭」であるとざっくり説明することができます。また、資格の取得のみならず、保育施設で適切に子どもの教育や保育を行うためには多くの知識と経験が必要です。