「保育所」や「幼稚園」、また近年設置が増加している「認定こども園」について運営を始める場合、様々な設置基準があるということを知っておかなければなりません。
この基準をクリアした施設や体制を整えて申請をしなければ事業をスタートすることはできません。そこで、以下ではそれぞれの施設につき、満たすべき基本的な基準をまとめていきます。
認定こども園の設置基準
認定こども園は、「幼保連携型」と「幼稚園型」「保育所型」、そして「地域裁量型」に分けられていますので、それぞれの基準を見ていく必要があります。
なお、保育所型であっても学校教育法に基づいた教育が受けられますし、幼稚園型であっても長時間保育が可能になるなど、各施設が持つ良さ得られるというメリットがあります。
幼保連携型の基準 | |
設置主体 | ・国や自治体、学校法人、社会福祉法人 |
職員要件 | ・幼稚園教諭と保育士資格
※令和6年度末までは、幼稚園教諭免許状又は保育士資格のいずれかを有していれば保育教諭等となることができます。 |
開園・閉園時間 | ・11時間開園、原則土曜日も開園 |
給食 | ・2・3号子どもに対しては食事の提供が義務
・原則は自園調理のため、調理室の設置が義務 ※ただし、満3歳以上であれば外部搬入可能 |
新設による設置
※幼稚園や保育所からの移行、幼保連携型からの移行の場合には別途要確認 |
・満3歳以上の教育時間は学級の編制。専任保育教諭を配置
・園長は原則教諭免許状・保育士資格を有し、5年以上の教育職・児童福祉事業の経験者であるか、それと同等の資質を有している者であること ・満3歳以上の園舎面積は幼稚園基準(3学級420㎡、1学級につき100㎡増)を満たすこと ・園庭として、「満2歳の子どもに関して3.3㎡/人」と「満3歳以上の子どもに関して幼稚園基準と保育所基準のどちらか大きい方」の合計面積以上であること |
幼稚園型・地方裁量型の基準 | |
設置主体 | ・国や自治体、学校法人
※地方裁量型では制限なし |
職員要件 | ・満3歳以上:両免許と資格の併有が望ましいものの、いずれかだけの保有でも可
・満3歳未満:保育士資格が必須 |
開園・閉園時間 | ・地域によって変動 |
給食 | ・2・3号子どもに対しては食事の提供が義務
・原則は自園での調理のため、調理室の設置が義務 ・幼保連携型と同じく、満3歳以上であれば外部搬入可能 ※各都道府県の条例等によって異なるケースがあり |
保育所型の基準 | |
設置主体 | 制限なし |
職員要件 | 満3歳以上:両免許と資格の併有が望ましいものの、いずれかだけの保有でも可
※保育時間への従事には保育士資格が必要 満3歳未満:保育士資格が必須 |
開園・閉園時間 | 11時間開園、原則土曜日も開園 |
給食 | 2・3号子どもに対しては食事の提供が義務
原則は自園での調理のため、料理室の設置が義務 ※ただし、満3歳以上であれば外部搬入可能 |
ここでは幼保連携型をメインに基本的な事項を挙げましたが、実際に設置する際には、細かく各基準の要件を見ていく必要があります。
保育所と幼稚園の設置基準
保育所は、保護者の就労等を前提に子どもの保育を行う施設です。そのため0歳児からの預かりや、夜間保育の実施も行います。
他方、幼稚園は教育施設であり、保護者の就労は前提にありません。
この基本的な違いを踏まえ、以下のような設置基準の違いがあることを理解していきましょう。
保育所の設置基準 | 幼稚園の設置基準 | |
学級編成 | 規定なし | 編成が必要 |
職員要件 | 保育士数は、0歳児3人につき1人、1・2歳児6人につき1人、3歳児20人につき1人、4・5歳児30人につき1人以上
※ただし常時2人以上設置 |
1学級の幼児数は35人以下が原則で、学級ごとに専任の教諭等を1人配置
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園長要件 | 規定なし | 原則「教諭免許状と5年の教育職経験」または「10年の教育職経験」が必要
※ただしこの要件と同等の資質を有すると認められる者であれば可 |
園舎等の階数 | 階数の規定なし
乳児室、ほふく室、保育室または遊戯室を2階以上へ設置する場合、転落防止設備等に関して建築基準法令上の基準も満たす必要あり |
園舎は原則2階建以下
2階建以上にする場合でも保育室、遊戯室、便所は1階の設置が必要 |
保育・教育時間 | 保育標準時間 1日11時間 | 原則1日4時間
参考:全国平均約5.5時間 |
これ以外にも満たすべき基準はありますので、本格的に取り組む際は、やはり細かく見ていく必要があるでしょう。
また、保育所や幼稚園に関しても各都道府県の条例当で別の定めが置かれている可能性がありますので、地域別の内容も要チェックです。
保育施設運営事業の申請は行政書士に
認定こども園や保育所、幼稚園、そして認定こども園にはさらに4つの区分があり、保育施設にも多くの種類があります。傾向としては認定こども園が選択される事例が増えていますが、それぞれの実態等をよく調べ、どの施設として運営をしていくのが良いか考えていかなくてはなりません。
さらに、それぞれの施設につき上で紹介したように設置基準が異なっている上、地域による差もあり、非常に複雑です。共通している基準も多くありますが、新たに保育児施設運営事業の申請をしようと考えるのであれば、プロのサポートが欠かせません。
当該申請に関しては行政書士事務所への依頼が可能ですが、専門性の高い分野であることから、実績ある行政書士への依頼をするようにしましょう。